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秋の帰途

夏を出立ち秋は応える。
閑静な夜道に吹く風が、ラーメン屋の薄光りが、
並木の映やす紅黄色を、鏡の中の火照った彼が、
底に埋もれた侘しさを、片時に触わる温もりが、
左様ならの溝を深めて、黙視もて教えてくれる。

灯りを心に宿そう。
遣り場なき手を忘れて、
揺れる心に火のつくように、
じっとしていよう。
遠ざかる影を、見つめていよう。

変化の狭間で衝動に駆られて、すべてを捨て去って、
何処へ遠出したくなった秋を、夜空に垂れ下がって、
朧げな雲を羽織った満つ月が、時の空隙に覗きみて、
そのとき人は睦まじき日常の、計り知れぬ底に浮く。

淀んだ瞳に風を与えて、
冬が小鳥を眠らせるように、
そっとしておこう。
萌黄に馳せて、ひと眠りしよう。