僕は繋がっている。
電話の向こうにいる君と、
お互い引っ張られて来たみたいに繋がってはいるけれど、
どういう気持ちで、何を話しているのか、
分からない。
分からなくて、泣き出すことも、
怒ってしまうこともないけれど、
喜んで、笑って、
それで満ち足りることもない。
電話という原理のもと、
僕らはまるで同じ人物。
そのとき交わされた会話は、
未だ記号にすらならないで、
たぶんそのへんに広がって、
ぼんやり眺める光景の、
気にもされない一部となる。
背中に壁のあたる感覚も、
指の爪がのびているのも、
窓から忍ぶ秋の吐息に触れて、
小鳥の飛んでいくみたいに去っていく。
沸き起こる風に紅葉の葉が舞う。
隣家の響音が二人の耳元から染み込んで、
乾いた口元にまでやってはくるが、
深淵に座す沈黙の糸は伸びたままでいる。
受話器を置いて、目の前の扉を開けて、
君に触れたい。
受話器を支点に動く身体は、
やりきれない自由に苦しんでいる。
それは鎖からの解放なのでなく、
双頭の苦しみに似ている。
君に触れたい、僕に触れてほしい。
空飛ぶ鷹のように、抵抗を抱くように、
繋がっていたい。