時として
とある邸宅の湾曲した廊下を歩くと、その壁に世界の写真が飾られている。時の空間とでも名付けたくなるような、さまざまな瞬間が所々に並べられ、最後の写真には演劇舞台上に寂しく置かれた唯一の椅子が写っている。私は廊下から庭へ出る。宵へと深まる夕刻の曇り空は深く蒼い、邸宅の白味に芝生の緑が調和すると、私の白い肌は青く光るようで美しい。となりに友は居なかった。またどこかをうろついて、一人で考えごとをする。打ち明けるのは月が見えるときで、私の知らない誰も居ないところで、月よ月よ今日も寝つきが悪いのですという。人間関係は人生に重要な役割を与えるもの、私は友の為に何が出来るかを思う。庭に在る正方形のオブジェは奥行きの不十分な形をしている。私の言葉はきっと塵芥のように過誤を含み、だけどこのオブジェのように、それは費やされる言葉が不十分だというだけで、決して間違った方向へ進んでいるわけではない、そういうことだってあり得るだろう。私は何も恐れる必要はない。もう夜空が広がり、たとえそれが私に真っ黒な天蓋を与えようとも、たとえそこに私の思い描く星が見えなくとも。
.
otonarikaminari