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遣らずの雨が降り、恋人の手はいっそう強く握られる。痛い、という訳知らぬ顔の恋人によりも、女は自分のほんの僅かな微表に驚いている様子だった。朝になって、暗がりの部屋を支配する静寂に顔をうずめる青年、雨脚は次第に強くなる。午後の喫茶店では学生達が今日行ってきたという展覧会の話題で盛り上がり、いつの間にかそれは、医者で冒険家である教授の話に逸れた。夕方、私は雲の薄皮を見つけて覗き込む宵の月光を待つ。もしそれが現れなくとも、日々を潜り抜けながら待ち侘びる。私たちが考えるのは、日々の中で進歩しながら、たとえ相手と会う機会が全くないにせよ、必ずやいつか、彼のもとへ戻るだろうということである。それは一方がそうであるというのでなく、彼もまた同様に或る処へ戻り、そしてやはり私たちは涙と共に落ち合うのである。戯けて月の照らす岐れ路に惑い、己が身に付いたコンパスを忘れ去るとき、月は私たちを呑み込む。