千代の月
草原に吹く風の言葉も、砂の言葉も分からない。追い求めた非凡が故郷を雲居のように遠のかせ、悟り着いた平凡が愛を燃やす。香ぐわす愛情のなかに、その名を知られぬ煙があるだろう。星々が陽光の衣をまとうとき、誰もそれに気づくことなく、星は輝きを再び取り戻すようにと願う。弓張の月が山の端に入るとき、想念の鏃は彼方の雪山を越え春の花を射るだろう。大晦の酒の宴で人々は往日の話で盛り上がる、そのうちの刹那、盃から溢れでる酒の雫は唯々人々の去来を移し出した。月よ、まだ盃を交わそう。尽きることのない話に病み付きになって、あくる世を侘びて待つことなく、わたしはどこから来たのだろうと、いつかの子どもさながらに自問する。夜が明けねばとけぬものも、それだからとて自ずととけるものではない。よもや雪の上とは思わず、文明開花に宴する心猿の人々は身の皺を忘れて走りまわる、転がる姿に飽かないで、雪解けどきの墓参り。月よ、まだ隠れてはならぬ。画家は眠たげなる目を晴らせて、儚くも去る者を掴むように疾くとその姿を描き留める、天文学者よろしく予期する者は、春のように、その閃きに涙する。
.
otonarikaminari