archiv

冬はまだ眠らない

風の残した擦り傷、透明な冬の繊細さに人は心を奪われ、持つ必要のないものまで抱える、眠っていた野性が不覚に滲み出すと、深睡の闇夜に引き摺られては戻ることもない。星飾りの光から離れた家路は無邪気の懐かしさを与える。忘れていた面影を蘇らせながら、束の間の灯火が夢を与える。夢、今こそ季節の思向きに従って、熊ならちょうど似合うという、大きな夢見を受け容れるのも悪くない。冬の星を着飾った樅の樹の下で、人は童子のまなざしを輝かせ、現実を忘れて朝の目覚めをおもっている。冬はまだ眠らない、針のような冷気も、灯のような暖気さえ人を動かすことはない。さあ、冬の月よ。続きを聞かせておくれ、ながい夜に、とっておきなやつを。