見知らぬ街に降り立つように、
踏み込んでしまった自分の足、
其処だけ時間のとまったみたいに、
投げ捨てられ、見捨てられた屑紙。
街を彩る輝きは視界に被さって、
街を見下ろす空が窮屈に見える。
其処がどれほど喧騒と付されても、
それでは僕の地肌を流れるだけで、
流れた記号は影にさえなりえない。
映画館の傍にある人気のない薄暗い通りの掲示板に、
並べて掲載された映画ポスターの横を通り過ぎた時、
上流から下流へと向かうように込み上がっては広がる意識、
それが強く残像の尾を伸ばしながら他の影を寄せ付けない。
君が座席をまだ離れていないなら、
僕は何処まで歩いたって君のもの。
スクリーンに映し出された君の姿の、
つい先ほどの虚構を纏って座るのを、
誰が気づいて手を差し伸べるだろう。
配置された放光によって煙にもならず消え去ってしまう、
この行き場のない孤児の居場所を誰が知り得るであろう。
僕は此処に居る。
そうしたことがどうしようもなく無意味であるときがある。
君が其処に居る。
そうしたことが限りなき時間へ齎されるのを信じてみたい。
歪に重ねて過去を着飾る街は、どんなに永い糸でも断ち切るのだから。
断ち切られた各々は、何処を向くべきかも、何処を彷徨うべきかすら、
教えられることなく、音もなく跡もなく、まるで既知の如く消滅する。
それこそ、あの影が、あの内気な彼が、沈黙の内に観ているもので、
そのうら、僕と、静かに夢の中の君は、同じ場所で同じものを観て、
刺激的な繁華街の煌めきの塵となって、微笑みを刻むことなく薄らぐとき、
彼の眼差しに輪郭をもった手が翳され、始まりも終わりも忘れ去られてゆく。