貴方の目は片方だけ大きい。普段でも幾度言われる事に対して、あまり疑問を感じたことはなかった。どうして人々はそう言うのか、どうでもよかった。
これはそれほど魅力的?
それとも私がなにかをしたに違いない、と。
因果の故に奇抜なこの顔、この形と成り果てたのならその為に私は必死に生きようとするだろう。だけどそういう直観を探すのはあまりにも虚しい。私は全くその為に生きているのではなかった。変畜な姿の為に生きることもまたあり得たように思われても、実際私は気に留めることさえ殆ど無かったんだ。そうでなくて何かしらの罪や罰、不届や怠慢の故であって、それにも関わらず、そのことを私が気づいていないなどと言うのならそれはどういう思考の戯れだろう。単に思ったことを率直に述べるような人であるなら彼は些か恍けている。そうした人に対して私は何も言うまいよ。整理するような気持ちで一息吐いて、私はもう一方の可能性を考えてみた。魅力。この世とあらば妙な趣向を深めてきたような人もいる。人々は私の魅力を目に見出したに違いない、そう云う証拠が実はあった。堪らないという態度でどうも私に会いたがって、そして会って話す時は目を見ず、私が視線を端へ少し逸らしていると或る人は凝っと見てくる風で、それがとても動物的に思われた。この話を魅力と結びつけるのに、何程の人が私を傲慢だと見なすだろう。残念ながら私は然程の早計を致すまで不自由じゃない。
どうして私がこのようなことを考え出したのか。それを問うと、身体の底で微動の震えが聞こえてくるようだった。時は遡って、私は視界を失ってしまったのだ。
Pathway
建築物は消え去って、残ってあるのは道筋だけ。それは目に見えるところで二手に岐かれ、更に深く枝を為し、その終極は地平線に座す。地平線、目に見えて何がなく、末端の鋭鈍は知り得ない。一成る道も、二成る道も変わらなく道。延びる手腕に生える草葉は栄枯の命を宿らせる。同じような道は揺るがなく歩を働かせ、奇妙な途上、ぼくは睡夢へ身を寄せた。在るが侭の心地良さ、寂しさ、零れる陽光に蝶は舞う、人生は舞台なのか。他人が唇に語り寄り、ぼくは囁いた。木漏れ日に踊る虫たちのそばで、静かな余睡に耽る鹿のように眠れる貴方に生りたかった。しかし、理想。幾夜を越えて万路を前に泣き叫んだ。夜を見届ける梟が去って、澱みなく朝を迎えたとき、家々が建ち並ぶ路を変わらず歩んでゆくのだ。そして、朝。二方より高鳴る靴の音は、煉瓦の匂いを特徴付けるように聞こえる。野放しの感覚は爽やかに、ぼくは何も考えない。頬の上の夜陰が彼方地平線の波にさらわれて、辺りは水面のように輝きを放つのだ。美しきは友であれ。通りすがり、声をかけ、話を愉しみ夜を伴するどんな者であれ、ぼくは憶えていられない。百年の時が過ぎ、観給え、ラルゴの風が卓上の林檎を落とす時、林檎もまたとゆっくり砕け散る様を。蠟燭の灯火はそのとき、何方に傾くだろう。眠れる貴方はそのままに、しかし君はもはや居ないだろう。老朽と再生を繰り返し居続ける建築に、我々の生を近づけるのは止し給え。彼が己の美しさに苦渋して、不条理に自壊を為さないために。ぼくは地平線へ向かって道を歩むのだ。地平線の存在に拘って、泣き喚くのはもう終わりにしよう。肌を滑るナイフ、立春の楽園、乱雄の瑕、愛が傾けた樹の花咲く時、信念が東風を大地へ泳がせる。その時、彼の地平線の向こうに何があるのかと構う必要はない。最も熱い血が、そよ吹く風に乗って空を覆うなら、その時ぼくは、この世を確かに抱くのだ。
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otonarikaminari
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