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五月の奴

夏が睡夢の中でその鼻息を強め、嫌々に生温い風が、どんよりと我々へ舞い込んでくるのも直な頃合い。雲は寝惚けの調子がこれまた唐突に、我々を日ごとに呆れさせよう。じわりと精力を吸い取って、うんざりさせる季節を越えて、それでも宴の街は盛況する。諸々が手を取り合って、まるで発電するかのように。だけどぼくのような人間には、どうもそれが身に合わないで、発電どころか反抗体のようなものだ。彷徨う、それだって、なかなか苦労なこと。一体、風になれるならばと願うものの、この脚重し、息吐き横たわって、蝉の歌の中で余睡に耽るのだ。だけどそれもまた、線と線とが丁度上手く重なり合うのでなければ、とても稀なことだ。重たい瞼、宵に意味のない溜め息。未だ月の半ばとはいえ、気温の微々たる変化がその結末を想い起こさせる。それと並行するように、夏の企てへと五月は誘う。否とは言えない誘い方を五月の奴は知っている、宵のテノールサックスに通じているのだから、参ってしまうよ。