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melancholy

歯磨きをしている。何故だか知らないが、目の前の鏡の、その中にも鏡がある。連鎖の形で奥へ奥へと並んでいて、少なくとも七つまでは認識できる、あとは連想に任せるしかないのだろうか。ずっと続いているのだろうか、何処までも果てしなく、さあね。だけどこの世界だ、へんなところで未知なる島が見つかったりするもんだ。そしてこの野郎だ、そういうことを考えるのには苦労ない。歯磨きをしている自分を凝っと見ていると、妙な思いに憑かれる。変な顔だと思う。なんだその目は。何にも魅力がない、嫌になる。ふとして朝の小さな音が、ぽつんぽつん、その居所を教えているように聞こえる。七つ目の鏡が可愛らしく思える。小さくて、子どもなのか、末っ子のようにみえる。取り出してみたくなる、欲しいと思う。でも、それは許されるのだろうか。どうしてか遠い、自分こそが、遠く離れてしまったように考えてしまう。私はこの鏡を前にして、行き場を失った感覚でいる。綺麗な洗面台、朝陽をうけて、それが淡黄檗に色めいている。私はこの鏡が、鏡でないことを知っている。どんなお伽噺だ馬鹿野郎。そう思ってしまえば、それで終わりなのに。