湯面を泳ぐ夜風が心地よい。
後ろへ傾く身体を両腕で支え、私は右のほうではトム・ヨークを、左のほうではヨーク・ハムについて思い浮かべていた。湯に底まで浸した裸の脚が雲の布をまとった朧月のように薄らいで揺れている。水面に映える虚ろな夜月の美しさ、公衆浴場で語らい、或いは彫刻像さながらの姿勢のまま黙してうつむく人間たち、それは時代に左右され難い風景に違いなかった。それから私は思い出したように空を仰いだ。東京のどっちつかずの夜の中でさえ強く輝く星のように、自ずと沸くように浮かび上がったのはニューヨークだった。