月
日の終わりの静謐な部屋は風のように影を移しながら、あるものは人間の日毎の足跡を払い、ある別のものは箪笥の隙間にその身を潜ませ、魚の眠る静かな海のように、夜雲の途方な移ろいのように、物の未だ動く気配を見せている。人々の寝静まるあいだに書き与えよ、粗放な心を平たく延ばして記憶を書き留め、目覚めたものが机上のそれを覗くなら、真っ白な紙のその影が朝陽に透きとおる羽根を、瞬くうちに落として翔び立つのが分かるように。それは部屋の窓に霜を置いて、見慣れた日常の朝を見せる、乾いた指で湿った窓に触れるときのような、ひんやりとした朝を。円天に耀く冬の太陽がいつか私を全く照らすなどと思い上がることはない。輝きは人々の吐息に被さり、品の良い空気に満たされると、さながら焚火のように消えゆくもの、それは睡夢と同じで、二つの世界を跨ぐものでもない。朝を通り過ぎる白玉の月は、欠くことのできない不思議な帆布である。
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otonarikaminari