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秋の心

月は頭上に潜み、風は冬を見越したように籠りがち、女は池沿いを歩き、向こうの男は友とよこに並んで、坂道を静かに歩いている。紅葉の枯れたのが私の足元で乾いた音を立てた、亀裂の入るような音が道肌に幾筋の枝を広げ、稲妻のように消える。遥か遠くの萌芽のような営みが今ほど目の前に現れたと思えば、懐かしい花山の幻想が蛍のように煌びやかに揺れる。時節柄の光に照らされ、にぎやかな夜を過ごす紅葉の下の、水面に灯る沈黙の火が、ささやかな過去を炙りだす。あの人の心が垣間見えるかと思えば雲は流れ、それがいっそうあの人の心へ己を向かわせる、美しき一兎を追う青年のように、自然の見境なく、音を立て飛び込む果てに狂気の冬があるならば、今夜も静かに去れ。朱に染まる可愛いらしい頬も、青空に映える紅い唇も今夜の夢を満たせばいい。幾重なる落葉は何処か遠くへ行くことはない。一枚の黄葉の枯れたのを拾って朝の朦朧とした青空に垂らしてみる、眩しさの中にも、きっと形があるだろう。