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ともに

小さな判子屋の玄関から
みめのまるい子どもが飛び出た
判子屋から飛び出たから判子屋の子どもだと思えば
颯爽と隣家へ入っていき「お母さん」と呼んだ
隙間のない家々を往来する子どもは風のようだ
花壇の諦められた裏庭も
薫りたつ台所の窓も
衣を寄せ合うもののように
喚び醒まされた記憶を愛撫して
ほぐれた糸を生活のうえにおとす
母の編んだニット帽をこぶり
外へころがる秋の子どもよ
弦を鳴らす駅の小鳥に
彼に尋ねてみよ
君のさえずる音楽を
ぼくも奏でられたらなあ
それが私か 私は音痴なものでね
態と置き忘れた文句もあったろうか
そのまま私たちはころがって
街の合唱に加わろうと
純真に走った秋の夕暮れは深く
いまだ少し暖かい