みんな去っていった、それは確かに分かった。誰もが変わらぬ幸せを願えば、それに適う現実を探し続ける。幸せを手にしたところで、未だ幸福を探し続ける者がいる。私の身体を二つに分けることはできないと、心だけ添えて送れば、たよりなくひらひらと剥がれ落ちる。誰もが愛の洞窟に住んでいるとき、一人だけ住居の材料を採りにいったところでなんになろう。人々の間柄はさながら自然が築くように与えられることはない。時に破れる恋ならば、愛の芽の咲く季節頃。風吹けばなんてことのない地肌が顕れる具合に、虚しい心のフィルムを映写機で回しましょう。映し出された画面の奥から人が近づいてくるなら、人間の変わらぬ姿がきっとある。燃える情念の焦がれ果てたとき、雄大なる景色が広がるなら、私の変わらぬ心に相応しい。
貴女の言葉を思い出す。私は熟する果実の色を知っている、歳を摂るにつれて貴女はより美しく、にじむ色の趣深く、いっそう魅力的になるのだから、爺さん婆さんさながらに盛衰を謳うなどせずとも、強き心もて、朝の珈琲と夜の深睡という二本の脚が動く限り、いつでも美味しいものへと辿り着く。その途、きっと麗しい花咲いて、また、ぼくにそれらを摘ませてくれますように。