archiv

航海 I / Ⅱ

航海 I

帆の下に坐す青年は本を読み、時おり睡夢に寛いだ。いつも見る夢は詩人の恋物語、骨太の帆船は志広げて静かに進む。


航海 II

波しぶきが冷たい。青年は昼はひねもす読書に没頭している。平穏な太陽の下、あれほど社交上手な青年がこれほど静かで、そのあいだ、彼の想像は海を越えた恋物語へ発展する。遠く離れて初めて気付いたが、私たちを隔てるものは巨大なのだ。恋の大海原よ、大海原の恋よ、私はその船乗りだ。いつか辿り着くところが恋の行方、昼と夜の奈落を跨いで帆船はまっすぐに進む。大切に抱えられた手箱を見せながら老人が語るのは、かつての恋、水の中にある恋の話だった。なんて不思議な話なのだろう、海の中にも恋があるらしい。夜深し月の眠りを待つように、夜空を見ながら青年は、今日も物思いに耽っている。