天体の表皮で温々と過ごすのを止め、屋根へ登って星を眺める。風が強く吹くのに髪が靡く。揺れぬ心は此処にぞある。浪速の影もじっとして、溶け込む夜明けを待っている。朝露を抜ける陽光に、揺らぐ未来が見えるその時を、果たして如何に受け止めるのだろう。何処からカレーの焦げた匂いがする。時計の針の動く音。波の愉楽を摘んでは砂のように更々消えてゆく、そのときの感覚は常に研ぎすまされるようだ。彼方の灯火、経験に乏しき小娘が、何の説明もない青年になにかを求めている。揺れる、消える、仄かに囁く秘密のひと味。外より忍ぶ制約の厳しさから、暗路の途上で作用する一つの自然があった。どうしてまた、彼方なのか。私は訊く。少し経って応えたものがあった。目を閉じて、安癒に沈んだ。この冬、何が生死を区別するだろう。私はアンプのボリュームを慎重にしぼっていくような気持ちを持っていた。アーティストの名前は忘れたが、レインコートという名前の曲だ。それが時に浮かんでは消えていった。接吻、故にまた炎が、時折背中を広がっていき、燃え尽くそうとする、心をか、それとも。辺りが眩しく燃えだした。
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澱み夜の合間に流動する感情は、沈黙を遵守するようだ。
大人しい夜、安心しきった鼓膜、律動に吸収される音の散
乱も、各々すべて独立性を保っているように見える。腕に
広がる地肌を撫で撫で手を滑らせて、その爽やかな感触に
浸るように心は踊る。手指は幾らかの変形へ移行しながら
踊っている。僕はその過程の必然性を知らない。冷ややか
な皮膚をまとって連動する骨骨が、夜を微かに動かしてい
る。嗚呼、独逸に忘れ物をした。あの名前はなんであった
っけ。骨踊り続ける夜の君、忘れ去られた物の名前を教え
ておくれ。貴い夜に、幾分風通しが良い。嗚呼、その声は
ヴァイマール?揺るがない首筋に添えられた幾万の言葉、
掴み処なく拡がる復古の匂い。果たしてその跫音は。テク
ノビートに揺れる部屋、そこから現出する影に感情は暇な
く応えている様子。そのとき水が、肌を静かに泳いでいく。
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otonarikaminari
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空を浮遊する雲の折り重なって、大きくなって、奥行き一面を占めている。窓の外、色素を抜かれた人々が行交っている、それを眺める。静けさは此処のものだった。道を歩けば静寂はない。閑静は要らない。だから此処を出ようと思った。そうして色素を抜かれた私も人々とすれ違う。思っていたよりも煩くない。無言、声、音よりも寒さがあった。すべきことはあるが、それにまして私は自由だ。ふらふらと歩くことで、何処かへ辿り着こう。ぼんやり、何もしないことが良いことだなんて思っていない。だからといって、何かをするわけでもない。私は自由だ。それだから、ぼんやり。ぼんやりしていると、髪の少しが風に乗ろうと靡いて、嫌な気持ちになった。塵中に紛れ込もう。蜜柑の匂いがやってくる。冬。それだけじゃない、捕えきれないものがたくさんになって、辺りを覆った。雪は見えないけれど、誰かが見せようとする。それじゃない、私が見たいのは。もっと、夏に活きる、あの陽の輝きを見たいと、そう思った。


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otonarikaminari
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